うちでは無理です。
と断られたお客様が、当社に来ます。

街角のAED、手術室の内視鏡、病室のパルスオキシメーター、飛行機の客席、駅のホームドア、半導体製造装置。こうした機器はどれも、中に電線が通っていなければ動きません。

伸光精線工業がつくっているのは、その電線です。

製品の表面に出てくることはありませんし、使う人の目に触れることもまずない。それでも一本に不良があれば機器は止まりますし、場合によっては人の命に関わります。私たちは長いあいだ、そういう線ばかりをつくってきました。

芯線を撚り合わせる撚線機

難しいのは、条件が互いに矛盾しているからです。

電気を通すだけであれば、電線づくりはさほど難しい仕事ではありません。難しくなるのは、条件が重なったときです。

たとえば医療機器のケーブルには、消毒液に繰り返しさらされても劣化しないこと、何万回曲げても断線しないこと、医師の手の動きを妨げない細さであること、患者の肌に触れても硬さを感じさせないこと、そして信号がまったく乱れないことが、同時に求められます。

ところが細くすれば切れやすくなりますし、柔らかくすればノイズに弱くなる。
ひとつを満たそうとすると、別のどこかが崩れます。この矛盾をどう成立させるかが、精密電線という仕事の中身です。

既製品のカタログから選ぶやり方では、こうした要求には応えられません。ですから伸光精線工業では、材料の選定から撚りのピッチ、テープ巻きの張力、シールドの構成、被覆の押出条件まで、案件ごとに設計しています。

医療分野との関わりは、社長の学生時代から始まりました

伸光精線工業が医療に深く関わるようになったきっかけは、社長・藤原が大学で所属していた研究室のテーマのほとんどが医療関係だったことにあります。人のからだと機械をつなぐ領域です。

そのときの縁や、当時つながりのあった技術者からの口コミ。
「あの会社ならつくれるかもしれない」と紹介される形で、医療機器メーカーとの仕事は少しずつ広がっていきました。

そうしたなかで手がけたのが、唯一国産メーカーの分娩監視装置のケーブルです。
生まれてくる命の状態をリアルタイムで見守る装置に使われる線をつくりました。

工場に立つ代表取締役 藤原

現在は、MRI用ケーブル、脳波測定用ケーブル、内視鏡・腹腔鏡用ケーブル、AED用ケーブル、EPカテーテル用ケーブルなどを量産しています。このうち難易度の高いケーブルは、量産にたどり着くまでにおよそ10年かかることもあります。

2003年3月には医療機器製造業を、2019年4月にISO9001の許可を取得しました。技術だけでなく、仕組みの面でも医療の現場に応える体制を整えています。

ケーブルの「中身」から、自社でつくっています

ケーブルは、外から見れば一本の線。開けば何層もの構造体です。
中心に導体があり、そこへ絶縁体を被せて「絶縁電線」ができる。それを撚り合わせ、テープを巻き、シールドで覆い、いちばん外側を被覆が守る。

伸光精線工業は、このいちばん奥にある絶縁電線を、自社の押出機でつくっています。

なぜそこにこだわるのか。絶縁体は、導体を覆うだけの膜ではないからです。
何を、どれだけの厚みで被せるか。それだけで仕上がりの外径も、曲げたときのしなやかさも、信号の通り方も、耐えられる温度も変わる。外側の工程をどれだけ追い込んでも、中身が違えば、たどり着ける性能は変わりません。

  • 撚りと成型:芯線をどのピッチで、どの張力で撚るか。ここでケーブルの曲げ寿命が決まります
  • テープ巻き:巻き角度、重なり幅、テンション。数値のひとつひとつが最終性能に効いてきます
  • シールド:ノイズを遮断しながら、柔軟性は殺さない構造をとります
  • マイクロケーブル:極細径の領域に対応します
  • 高速伝送:信号の質を落とさない設計を行います
  • インターコネクション:端末処理まで含めて一貫で対応します

線をつくる機械も、自分たちでつくってきました

特殊な線をつくるには、特殊な設備が必要になります。ところが、そういう機械はどこにも売っていません。

そこで伸光精線工業では、設備そのものを自社で製作し、制御プログラムも自分たちで書いてきました。
工程の途中で「ここがうまくいかない」となったときに、機械の仕様まで戻って見直せる。外注を待たずに翌日から改造に取りかかれる。
この機動力が、難易度の高い案件を引き受けられる理由のひとつになっています。

2024年6月にはファイバーレーザー加工機を導入しました。従来の手法では届かなかった加工精度の領域まで、対応範囲が広がっています。

自社工場の製造ライン

医療以外にも、幅広く使われています

医療MRI、AED、パルスオキシメーター、脳波測定、内視鏡・腹腔鏡、分娩監視装置、EPカテーテル
産業機器各種画像機器、半導体製造装置
交通・インフラ電車のホームドア、コインパーキング
航空航空機の客室用ケーブル
プラント原子力発電所のカメラ用ケーブル
情報通信マイクロ波・ミリ波用同軸ケーブル

並べてみると分野はばらばらですが、共通点があります。どれも、止まると困る場所だということです。
止まらない線をつくるのが、私たちの仕事です。

品質は、工程で作り込みます

寸法精度の厳しい製品では、思うようにできないことも当然あります。そのときは材料の状態、設備の設定、作業方法をひとつずつ確認しながら、狙った品質が安定して出せる設定が見つかるまで試作を繰り返します。
生産の条件が確定するまでに何日もかかることもあります。

見えないものを、つくり続けます

伸光精線工業のケーブルは、完成した機器の中に隠れてしまいます。テレビCMに映ることも、店頭に並ぶこともありません。

それでも、MRIの繊細な画像を生成するとき、手術室でモニターに波形が流れるとき、そこには必ず誰かがつくった線があります。その線を、私たちがつくっています。
創業から積み上げてきたのは、目立つ技術ではなく、途切れない技術でした。これからも「難しい」と言われる線を引き受け続けます。

既製品では成立しない仕様でお困りでしたら、まずは一度ご相談ください。

指先でつまんだ細径ケーブルの端末

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